RURUの詩(うた)

流々純一の詩集

作る詩は、感傷的な詩が多いですね。

 

 

 夢とは何か、

 分からないまま求め続けた。

 多くのことが実現された。

 そして、

 他人にどんなに評価されても、

 他人にどんなに称賛されても、

 心は何も動かないことに気づいた。

 

 僕は夢の中をさまよった。

 たった一つの喪失による、

 たった一つの承認を求め、

 

 そして僕の夢は、

 他人に語ることのない、

 深い夜の闇になる。

 

 2015年2月11日作

三 月

大学を卒業する際に書いた詩です。三月は人と別れる寂しい季節ですなあ。

 

三 月

           流々純一

 

 群青の水面に、

 四年間の答えが、

 見えかくれしていた。

 私はとりつかれたように、

 深い水面をみつめていたが、

 人と別れることに混乱していた私は、

 何も感じることができなかった。

 一度何かを感じ始めたら、

 限りない寂しさが、

 私を狂わしてしまうであろうから、

 私は必死になって、

 無感情のまま、

 いつまでも寂しげな三月の海をながめていた。

 

  1994年

くじびき

久しぶりに詩をつくりました。時々過去のことを夢に見ます。夢からさめないでと思う時が時々。いつまでもベッドから起き上がれません。

 

 

くじびき

                           流々純一

当たればすべてを得られ

外れればすべてを失う

そんなくじびきが

ある日突然目の前に現れた

眠い目をこすりながら

しばらくぼうと見ていたが

僕はくじをひかなかった

否、ひけなかったのだろう

何年もたって大人になると

そのからくりがおぼろげに見えてくる

くじをひき損なった僕は

いつまでも、じくじくと悩む

なぜあのとき

あのくじをひけなかったのだろう

あなたはあれ以来

僕と空間を分かち

違う次元に生きている

なぜあのとき

あなたの手を引かなかったのだろう

自分の無力な手のひらを

にぎったりひらいたりして

救えなかったその一つのつながりを

いつまでもいつまでも

思ったり忘れようとしたりして

この高き塔にくらしている

西に眺める山の頂にむかって

僕の電波を世界に広げよと

心の中で念じる

われを異次元に連れて行けと

祈る

 

祈る

 

2015.1.23

青稲(せいとう)

以前に書いた詩を作り直しました。

 

青 稲

            流々純一

  志は孤独なものだ

 と、友のつぶやく。

 僕はふと

 緑の野辺に問いかけた。

 人間とは

 沢山いればいるほど

 ひとりぼっちになるのですか。

 幾千と知れぬ

 豊かな青稲は

 素知らぬ顔で風にそよぐ。

 僕は叫びたかった。

 地上で最も近い者でさえ

 わかり合えぬよう生かされているのか。

 孤独の島にたつ砂の城

 戻るとそれは夢に消えてしまう。

 すべてを失った僕は

 またも懲りずに奇妙な城を造り始める。

 大地は人間に

 かようなことを課しているのか。

 青稲を歌い笑い

 僕の心をそわそわと甘くなぞる。

 友よ、志は孤独なものだ。

 この海を渡りきることを誓え。

 

  1997.7.15作 2014変更

3.もしもあの日がなかったら

今日は、自分の学生時代に作った詩の一つを載せます。

 

 もしもあの日がなかったら

                流々純一

 気づいたら

 ワイン色のじゅうたんの敷かれた

 静かな図書館の廊下で

 僕は君を探していた。

 君がそこにいるのか

 僕には分からない。

 でも僕は

 そこに君がいたとしても

 君に気づかれないように

 君を探していた。

 君を見つけたなら

 さも偶然に出会ったようにして

 一言声をかけさえすればよかった。

 あの夏のなつかしくもやさしく存在する

 あの一日がなかったら

 こんな気持ちにはならなかったのに。

 あの日の前の自分にかえって

 この日の自分を見つめたなら

 僕は床にころげまわって

 腹をかかえて笑うことだろう。

 

  1991.12.25

少し前に知り合いを亡くしました。彼のことを思って作りました。

 

 

高き塔

 

                 流々純一

 

 君何故に逝く。

 若き妻と幼き子を残して。

 君何故に逝く。

 苦楽の後の乾杯のせぬ間に。

 思うに逝ったのは君ではなく

 逝ったのは私である。

 夢の世界に閉じこもった私の死である。

 これから君は生きるだろう。

 全力でその魂を生きるだろう。

 私こそ この死から立ち上がらなければならない。

 私の向き合う君の死は

 君から眺める私の死。

 私は黄泉から立ち上がり

 不毛の生への戦士となる。

 夢と希望の花を咲かせる戦士となる。

 再会しよう、戦の後に。

 乾杯しよう、夢の彼方で。

 魂の涙が大地に流れ

 それは高く巻き上げられて一つの塔となった。

 戦士の私は重い鎧を身につけて

 山を下り平野に散った。

 さらば君。

 高き塔より我を見よ。

   再会するまであとわずか。

 

 2014.9.2

1.青苗(あおなえ)の海

仕事を離れ、田舎に戻った時に見た風景をイメージした詩です。

 

 

青苗の海

                流々純一

目の前に広がる青苗の海

私は、気高く見渡した。

ここがふるさと、心の源

いつも私といっしょにいてくれた海

蝉と蛙が鳴いている。

 

遠くに見える社の森から

赤い特急列車が青苗の海を渡る。

古びた踏切の余韻は

私をどこにいざなうか。

 

運命という名画を失い

私は自分の意志で

よろめきながら立ち上がる

垂れ穂を夢見る青苗の

その一面の海原に

私の心はざぶりと飛び込んだ。

 

 2014.8.29