RURUの詩(うた)

流々純一の詩集

3.もしもあの日がなかったら

今日は、自分の学生時代に作った詩の一つを載せます。

 

 もしもあの日がなかったら

                流々純一

 気づいたら

 ワイン色のじゅうたんの敷かれた

 静かな図書館の廊下で

 僕は君を探していた。

 君がそこにいるのか

 僕には分からない。

 でも僕は

 そこに君がいたとしても

 君に気づかれないように

 君を探していた。

 君を見つけたなら

 さも偶然に出会ったようにして

 一言声をかけさえすればよかった。

 あの夏のなつかしくもやさしく存在する

 あの一日がなかったら

 こんな気持ちにはならなかったのに。

 あの日の前の自分にかえって

 この日の自分を見つめたなら

 僕は床にころげまわって

 腹をかかえて笑うことだろう。

 

  1991.12.25